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  • 執筆者の写真33.VIN

堀晶代が語る ジュヴレイ・シャンベルタンとヴォーヌ・ロマネ

Gevrey Chambertin / Vosne Romanée   



グラン・クリュの宝庫、ジュヴレイ・シャンベルタン。偉大なピノ・ノワールの産地としては、コート・ド・ニュイ最北端だ。最北端ゆえピノ・ノワールは極限の状態に置かれ、生産者はじっくりとその完熟を待たなければならない。完熟を待った結果、多彩なアロマやテクスチャー、マチエールを蓄えるのだ。


威厳に満ちたシャンベルタンを始め、この村の9つのグラン・クリュを飲むとき、人はちょっぴり身構える。イメージは「石」だ。それは無骨な岩石でもあれば、宝石のように色鮮やかな貴石でもある。少なくとも、この村のグラン・クリュは気安くガブガブと飲まれることを拒絶する。


クロード・デュガは言う。「ごく少量のグラン・クリュであるシャルム、グリオット、シャペルを別々に造るのは、明らかに違いがあるから」。この違いはテロワールによるものか、それとも造り手の解釈によるものか。ミステリアスだ。


いっぱう「美しい真珠の連なり」と呼ばれるヴォーヌ・ロマネ。グラン・クリュが占める比率は、村名以上のクリマに対し、どの村よりももっとも高い。かのロマネ・コンティの畑の前には連日観光客が押し寄せ、記念写真を撮る。あまりの人気に、ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティは数年前から「畑には入らないでください」という看板を掲げたくらいだ。


その魅力は知名度だけではない。ヴォーヌ・ロマネのワインを飲むとき、人はなぜだか懐かしさを期待してドキドキする。香り、一口啜るとそこにはこの土地でしか生まれない複雑性や官能性がある。よく「神に選ばれし地」という言葉が使われるが、それは適切な表現だろう。今や女性生産者がこの地に多いのも、偶然ではない。「mer(海)」と「mère(母)」が穏やかに育む真珠の連なりには、男性生産者も「女性らしさや懐の深さを感じる」という。


一般的に堅牢で男性的なジュヴレイ・シャンベルタンに身を任すのか、母なる大地を感じるヴォーヌ・ロマネに包まれるのか。それは飲み手の気持ち次第だろう。

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