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フランス語で泡立つワイン=発泡性ワインのことですね。
「ヴァン・エフェルヴェサン」とよばれることもあり、英語だとスパークリングワイン。その泡の正体は二酸化炭素。いわゆる炭酸ガスです。その起源といえばシャンパーニュです。そして、これを見本として様々なヴァン ムスーが造られてきました。
どんな種類があるの?
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最初に気をつけるべきは、その甘さでしょうか。表にあるように、甘みのほぼないものから、かなり甘いものまであります。必ず表か裏ラベルに表示されていますので確認してください。
次に白か、ロゼか、まれにある赤かですね。味わいの差は、甘さほどではないですが、見た目の印象の違いは大きいですね。
ガス圧でも、ヴァン ムスー=発泡性ワインとペティアン=微発泡ワインに分かれます。口の中での泡立ち方に差が出ます。ワイン中の炭酸ガス圧が3気圧以上のものがヴァン ムスーです。シャンパーニュは産地と製法が細かく規定され、炭酸ガス圧も5気圧以上の規定があります。
どう楽しむ?
ヴァン ムスーといえば、アペリティフの王様ですね。気軽なおしゃべりをしながら、冷たいヴァン ムスーと軽いおつまみがあれば、それだけで会話も弾むはずです。でも、重要な効能は食欲増進です。しっかりとした酸と炭酸ガスが胃を刺激して、食欲をもり立てます。
続いて食中酒としてのヴァン ムスーです。比較的安価なものは、アペリティフまでが無難ですが、造りのしっかりしたものや、軽い甘みのあるものは、前菜と合わせても美味しいものです。甘さでは、エクストラ セックくらいまでがおすすめです。
一部の高額でしっかりした味わいのヴァン ムスーはメインのお料理と合わせることも可能です。といっても血の滴りそうなステーキや、ドミグラスソースたっぷりのお料理には難しいかもしれません。それでも、お魚や鶏や豚などの白身のお肉なら守備範囲でしょう。
セック以上の甘みのしっかりしたヴァン ムスーは、フォアグラのテリーヌやデザート、またチーズと楽しむことを意識して造られています。
専用のグラスは必要?
あるにこしたことはないですが、なくても大丈夫です。でも、グラスによる違いも楽しいものです。四種類のグラスの形を写真で示しました。それぞれのメリット、デメリットをご紹介しましょう。
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フルートグラスは背が高く細身ですが、この形状はグラスの底から泡が立ち上るように工夫されたものです。泡を目で愛でるにはこの口径が狭く、液体の高低差のある形状がベターです。味わい的にはヴァン ムスーのさっぱりした印象を引き立てますが、高額なシャンパーニュでは、その複雑さや豊かさを損ないがちです。
クープと呼ばれる横幅の大きなグラスは、マリーアントワネットの乳房をもとに考案され、一時はありとあらゆる飲み物のために使われたとも聞きます。このグラスのメリットは、ヴァン ムスーを急いで沢山注いでもこぼれないところにあります。そのため宴会場などでつかうことが多いですが、それゆえ破損防止のために口にあたる部分を厚くしてあることが多く、これが味わう点ではデメリットになります。また泡が立ち上り続くこともありません。自宅用にはもっとも不要なグラスかと思いますが、アンティークのバカラ製のクリスタルで素晴らしく美味しく飲めるクープに出会ったこともあります。
最近人気なのが、チューリップ型のフルートです。先端がすぼまることで香りをとどめ、やや口径が広いことで、味わいの複雑さや豊かさを感じさせてくれます。そして深さがあることで立ち上る泡を愛でることもできます。ただし比較的高価なのが玉に瑕です。
最後は、白ワインに使われることの多い小ぶりのワイングラスですが、ヴァン ムスーを楽しむのにも十分です。大きめのボウルと広い口径が、香りや味わいを引き立ててくれることが多いです。長い熟成を経たものなどは、もっと大ぶりの赤ワイングラスもおもしろいです。ただしワイングラスは、安価なものの欠点を感じさせることがあるのと、立ち上がる泡を楽しむことはできないですし、炭酸ガスの抜けも早いです。
細身のフルートは、色が薄く、あまり効果でないさっぱり感を楽しむヴァン ムスー向きで、外観が金色がかって複雑性のあるヴァン ムスー、というより高価なシャンパーニュはチューリップ型のフルートをおすすめします。
冷やし方にコツはあるの?
簡単なのは冷蔵庫です。2時間程度で飲み頃の8度くらいまで下がってくれます。ドアポケットは振動があるので、本体側に横にして入れてください。急ぐ場合は、ワインが入ってる高さまでたっぷりの氷水を入れたアイスバケツに入れれば15分程度で冷えてくれます。本当に急ぐときは氷水に塩を加え、ボトルを優しく回し続けましょう。比較的安価なさっぱりした印象を楽しむタイプなら冷ためで、高価で複雑さをもつものなら、冷やしすぎに注意してください。
気をつけたいのは、移動させたばかりのヴァン ムスーです。きっちり冷やさないと、中身が吹き出したり、コルクが飛んだりします。少なくとも3日以上、できれば3週間以上前に移動させて、静かに保管すると同じヴァン ムスーがずっと美味しく楽しめます。そーっと、取り扱ってくださいね。
注ぎ方はどうしたらいい?
泡がグラスからこぼれないようにそっと注ぐのは当然として、注ぎ方で液中に残す炭酸ガス量が変わります。グラスを斜めにして、側面に沿ってそっと注ぐと炭酸ガスを逃さないですみます。また細身のグラスほど、温度は冷たいほど炭酸ガスは残ります。ただし、時には炭酸ガスが多すぎて鼻に突き抜けたり、口の中で刺激的すぎて味わいを隠したりすることがあります。最近は、特に香りや味わいを楽しむ高価なものの場合、口径の大きめのグラスを使い、あえて泡を立てて注ぐことが多くなりました。
ついでに言うと、ヨーロッパの文化は食卓で鼻をチーンとかんでも問題ありませんが、ゲップはご法度。そのためマダムは、注がれたシャンパーニュを小さな泡立て器のようなものでかき混ぜて、泡を抜くことすらあります。炭酸ガスが抜けても、高品質なシャンパーニュなどはむしろ美味しい白ワイン的な楽しみ方ができます。
そうそう、最初の1杯は、状態を確認する部分です。味見して問題がなければ、その下を注ぐようにしましょう。人数が多くておかわりできないなら、シャンパン ストッパーをして、そっと3回くらいボトルを逆さにして、均一化してから注いでください。
保管はどうしたらいい?
ヴァン ムスーも普通のワインも冷蔵庫は保管には向きません。コルクが乾燥し、毎日何度も繰り返される庫内温度の上昇下降で品質を損ないます。といっても1ヶ月程度までならなんとかなります。また半年までなら常温でも大丈夫です。常温の場合はなるべく温度変化のない、涼しいところを選んでください。例えば、北側のお部屋の押入れです。半年以上の場合はセラーが理想的ですが、セラーがない場合は発泡スチロールのリンゴ箱が普通のワインの保管場所としておすすめです。スクリューキャップのヴァン ムスーや白ワインなら冷蔵庫でも大丈夫です。赤ワインは冷蔵庫だと酒石酸が結晶し、風味も変わってしまうことが多いです。
値段の違いはなぜ?
ブドウの値段の違いも大きいですが、炭酸ガスの含ませ方で、まず大きく二つにわかれます。昔からの方法は発酵によるもので、もう一つは炭酸ガスを吹き込んで溶かし込んだものです。発泡しない普通のワインを高圧に耐えるタンクにいれて冷却し炭酸ガスを吹き込む炭酸ガス注入法は、安く造れるのがメリットですが、口の中ではじける泡が荒くなりがちです。
発酵による造り方って?
お酒を造るには、酵母(イースト)と呼ばれる微生物の代謝を利用します。酵母は糖分をアルコールと炭酸ガスに分解するときのエネルギーを利用して生きることができます。いわば糖分がエサで、アルコールと炭酸ガスが排泄物です。アルコールが高くなると酵母はアルコールの殺菌力で死んでしまいますが、そのアルコールの魅力にとりつかれたのが人間です。
発酵するときには、必ず炭酸ガスが同時に造られるのですが、普通のワインはその炭酸ガスを逃がすのに対して、逃がさないようしたのが発泡性ワインやビールです。その容器がタンクだとコストが落とせますが、高圧の炭酸ガスに耐えることのできるタンクが造られるまでは瓶で発酵させました。発泡しない普通のワインと糖分と酵母と一緒に瓶に詰めて瓶の中で発酵させる手法が伝統的製法Method Traditionalと呼ばれるもので、一番高価になります。シャンパーニュやクレマンはこの瓶内二次発酵が義務づけられています。
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楠田卓也氏 プロフィール
ワイン&日本酒エデュケーター。ブルゴーニュ委員会公認ワイン・インストラクター。インターナショナル・ワイン・チャレンジ・ロンドン日本酒コチェア、インターナショナル・ワイン&スピリッツ・コンペティション 香港ジャッジ。
「ワイン王国」元副編集長。ロバート・パーカーJr.の『ボルドー』(1989年、飛鳥出版)の翻訳のほか、ステファン・タンザーの『International Wine Celler』日本語版監修、『ワイン大全』(日経BP)の共著など、ワインに関する情報提供に力を注いでいる。日本酒造組合中央会主催第6回全国利き酒選手権大会個人優勝。アカデミー デュ ヴァン青山校&大阪校講師
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