• 33.VIN

3人のワインな女性



大洞 久美 KUMI OHORA


スラッと背が高く、上品なそのマダムは、67歳にしてソムリエ資格を取得した。過去に男性でも一人、同67歳での取得者がいるが、間違いなく一般社団法人日本ソムリエ協会において、最高齢の記録である。


ワインを始めたきっかけは、娘と息子が名古屋市内にてワインバーをオープンしたからであるが、仕事を手伝ってゆくうちに、ワインの魅力や人生の楽しみを発見したのだと言う。ワインを通して様々な人たちと繋がることは、専業主婦だった彼女にとって、久しぶりの社会科見学だったのかもしれない。


仕事の合間にソムリエ学校にも通い、先生や学友たちと楽しみながらワインを学んでいった。当初、マークシートの記入の仕方さえ知らなかったというのだから、全てが新鮮であっただろう。しかし、高齢だからといった優遇などあろうはずもなく、並々ならぬ努力は必要となり、時には落ち込んだりもしたようだが、家族を含めたすべての人たちが彼女を応援し、支えとなった。


2013年、念願のソムリエ資格合格。子供たちのワインバーで、盛大にお祝いパーティーを催した。そして、2014年、彼女にはもうひとつ、嬉しい出来事が訪れる。息子夫婦に子供が生まれたのだ。遅ればせながら、初孫の誕生である。「いくつになっても、素晴らしいこと、素敵なことって訪れるのね。本当に人生っていつからでも楽しめるのね」と、とびきりの笑顔を見せてくれた。


今、彼女は不定期ではあるが、ワイン会を開いている。資格というのは、取得したらおしまいではない。取得後も更なる研鑽を重ねることで、資格が生きてくる。現在、68歳の現役ソムリエは、今日もワインを楽しんでいる。


情報提供:一般社団法人日本ソムリエ協会



堀 晶代 AKIYO HORI


数々のメディアで執筆活動を行っているワイン・ジャーナリスト。彼女のモットーである「地に足の着いた取材」は、正直かつ正確な情報を生み出し、読む人にワインの素晴らしさを伝えている。


彼女は、90年代から百貨店やワインショップでワイン販売を担当していたが、95年から1年間、パリに販売技術指導員として派遣されることになった。当時はネットの情報も少なく、産地や生産者の情報を知るには、雑誌、評価本、インポーター資料しかなかったため、ワイン造りの現場や畑を直に見るチャンスに胸躍らせたという。


生産者たちの魅力などを生きた情報として伝えたいという理由から、彼女がはじめたのが「定点観測」である。ブルゴーニュであれば、オスピス・ド・ボーヌの時期、その年に生まれたばかりのワインを200種類ほど試飲、翌年に毎年約30~50軒のドメーヌで樽からの試飲、翌々年に瓶詰め後の試飲を行い、味わいの変化を追う。この途方もない作業を10年以上続けているのだから驚かされる。


一度、彼女の定点観測に同行させて頂いたことがあるが、行く先々の生産者と真摯に向き合い、ワインと楽しそうに接する彼女に、同じジャーナリストとして心底感動させられた。


本誌の大人気コンテンツ「人生を変えたワイン」をはじめるにあたり、彼女と打ち合わせをした時のこと、彼女が発した言葉を今も覚えている。

「ワインは本当に魅力に溢れています。そのキラキラとした楽しさを皆に伝えてゆきたい」


自著に「リアルワインガイド ブルゴーニュ」(集英社インターナショナル)

共著に「ワイン ブドウ品種基本ブック」(美術出版社)



野田祥子 SACHIKO NODA


国家資格であるフランスのソムリエ資格は、その難易度も世界最高峰で、試験は当然フランス語となり、英語での実技も必須となっている。マークシート形式ではないため、回答は全て筆記となり、スペルミスも不正解となる。聞いてるだけで諦めてしまいそうなこの難関に、果敢に挑んだ女性がいる。


まだ可愛さが残る彼女は、国立大阪大学・工学部を卒業し、ワインならばフランスという冗談半分のような理由で渡仏した。日本でほとんどワインの経験がない彼女は、一念発起しこの挑戦をスタートしたのだ。ボルドーのソムリエ学校に通い始めたが、最初は楽しくなかったと言う。言葉もわからなかったし、ワインも馴染みのある味わいではなかったため、苦学苦行に感じる時期があったようだ。


フランス語が理解できるようになった頃から、学校もワインも楽しくなってきた。試飲したワインの感想を語り合うことで、ワインの知識も格段に深まり、純粋にワインを楽しむことができるようになったのだ。

2014年、24歳になった彼女は、たったの一年足らずでフランスのソムリエ資格:Mention Complémentaire Sommellerieを取得した。


「ワインは言語(外国語)と似ています。言語は話せるだけで、世界中の人と語り合え、自分の人生を楽しくしてくれます。ワインも決して必要な知識ではないけれど、私の人生を豊かにしてくれます」

凄い女性が現れたものだ。若く、聡明な彼女は来年、ワイン流通のための国家資格に挑む。



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