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  • 執筆者の写真33.VIN

TRIMBACH アルザスの頂(いただき)




霧煙る畑は、まるでおとぎ話のように神秘に満ちていた。


しかし、真に魅了されるのは、アルザスの頂に立つ“トリンバック”の真実とその味わいである。


 


アルザスの特徴


「アルザスワインは世界で他に類を見ない、特別なワインが生み出されます。その広さは15,000ヘクタールほどの小さな地域で、ボルドーの10%しかありません。土壌はパッチワークのように細かく分かれていて、花崗岩、粘土石灰、マルノ石灰、火山、砂岩など、あらゆる醸造家が欲しがる全てのテロワールが存在しています。品種はリースリングをはじめ、ミュスカ、ピノ・ブラン、シルヴァネール、ピノ・グリ、ピノ・ノワール、ゲヴュルツトラミネールを使用しています。とりわけアルザスのリースリングは他と比較にならない程の歓喜の味わいとエネルギーを発しています」



トリンバック一族


「トリンバックは1626年に端を発し、ピエール・トリンバックと私ジャン・トリンバックが12代目に当たります。13代目も勿論続いています。13代目のアン・トリンバックとジュリアン・トリンバックは自らこの道に進んでくれました。13代もの歴史が自然に繋がっていくことは、本当に素晴らしいことであり、一族にとって喜ばしいことです。400年近くものトリンバックの伝統は、我々一族で守り続けています。そして、私の父の代(11代目)からは、父と叔父の2家族でトリンバックを支えるようになりました。私達の代も、醸造は私の兄であるピエール、管理や広報は私が行っています。13代目は、ピエールの娘アンが私の仕事に就き、私の息子のジュリアンが醸造を担当します」


 

一族の家訓

 

「ガストロノミーなワインを造ること。料理に合うワインを造ること。アロマティックでフルーティーであってもドライなワインを造ること。そして、忘れてはいけないことは、繊細でエレガントなワインを造ること」


 

次世代への伝道

 

「ワインの見解を広げるため、小さな頃から、世界中の素晴らしいワインを飲みました。それは13代目にあたるアンもジュリアンも同様で、それは自然とガストロノミーの教育となります。ワインの研究という目的だけではなく、恵まれた環境は、ワインが持つ素敵さを実感する機会と成り得るのです」


 

13代目トリンバック

 

「フランスで〔13〕は幸運の数字なので、13代目は幸せを引き寄せると言われています。息子のジュリアンは、4年間醸造を学び、ディジョンで博士号を取得しました。その後、ルイ・ジャド、エゴン・ミュレーで修行し、来年には南アフリカへ旅立つ予定です。今でも忘れられないのが、彼が12歳の時に、『僕はピエール叔父さんのような仕事をしたい』と言ったこと。本当に嬉しく思いました」


 

トリンバック

 

「1626年当時は、5キロほど離れた〈リキュイール〉という場所にいて、第一次世界大戦時に、ここ〈リボーヴィレ〉へ移動してきました。1918年に現在のこの土地に本拠を構えました。現在45ヘクタールの畑をもっており、アルザスで最も広い畑の所有者です。更に、ピノ・ブラン、ゲヴェルツトラミネール、クラシックワイン用のリースリングのブドウを、60〜70ヘクタール分購入しています」





甘美な香り

 

「醸造所を案内します。1970年、1980年、1990年に増築し、どんどん大きくなっています。40%木製タンク、60%ステンレスタンクを使用しています。木製タンクで醗酵させることはとても良い味わいを造り出します。伝統的な作り方だからというのもありますが、我々自体が木製タンクを好んでいるのです。ステンレスタンクは管理と衛生面に優れていますね。この地域のワインはとてもアロマティックなので、醸造所の香りが他とは違うでしょう。リースリング、ピノ・グリ、ゲヴェルツトラミネールはとても華やかな香りを放つ品種なので、醗酵の段階の時はもっと甘美な香りに包まれます」


 

すべての三ツ星レストラン

 

「年間100万本を生産しています。アルザス一(いち)の生産本数ではありませんが、少なくはありません。1カ国に1インポーターと決めていて、世界中に輸出しています。瓶内熟成のためと、如何なる発注にも対応できるよう、300万本のストックを置いています。また、フランス国内全てのミシュラン・三ツ星レストランに私達のワインを置いてもらっています。素晴らしいシェフたちに認めてもらうと共に、ガストロノミーの料理に合うという証です。これは一族にとって非常に誉れ高く、誇りに思っています」



フレデリック・エミール

 

「長きに渡るトリンバックの歴史は、全ての世代が築いた伝統であり、文化でもあります。その中で忘れてはならないのが、私の高祖父(ひいひいおじいさん)、フレデリック・エミール・トリンバックです。1898年にブリュッセルの国際品評会にトリンバックのワインを出展し、最高位の賞を受賞しました。それを機に、トリンバックの名は世界的に広がり、我々のワインは世界中で注目を浴びることになりました。1967年、私たちの父親が彼へのオマージュとして、この建物の後ろにあるリースリング最良と謳われる二つのグラン・クリュ畑で造ったワインを、『フレデリック・エミール』と命名しました」


 

熟成

 

「飲み頃というのは、非常に難しいです。それは人それぞれで、好みの問題ですから、正解はありません。あくまで私の好みですが、リースリング・クラシックは2年から3年、レゼルブは5年くらいが好きです。グラン・クリュのフレデリック・エミールは7年から8年。クロ・サンテューヌは10年後ですね。ある国では文化的にも若いワインが好まれるが、他の国では全く逆の場合もあります。それは味の好みと教育でしょうか。それでも我々はワインには時間が必要だと考えているため、なるべくこちらで寝かせてから出荷しています」


 

クロ・サンテューヌ 2009/2006

 

「トリンバックはクロ・サンテューヌだけが素晴らしいわけではありません。しかし、試飲するたびに、喜ばしい感情が湧き上がってきて、本当に特別なワインだと思います。この喜びを与えるワインで、雑誌の成功を祈り、乾杯しましょう」


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