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  • 執筆者の写真33.VIN

ダンディズムとはなにか。

更新日:2019年5月9日


醸し出されるダンディズム


良い作り手は、等しく魅力的である。人もワインも、洗練されたエレガンスを内に秘め、人々を魅了する。



  • 縁があり知り合いとなった5代目当主のアンリ・ボワイヨ氏。有名生産者という事は知っていたが、それ以上に、彼の人間的、男性的な魅力に惹かれ、取材を申し込んだ。案の定、一握りの成功者や、熟成された男性が発するフェロモンに魅了され、ただただ彼の心地よい言葉の音色に耳を傾けた。


自身の世界に没頭する。


私は5代目当主だが、若い頃は医者を目指していたんだよ。ワイン造りにはまったく興味がなかったと先に告白しておこう。父は自分の意見を尊重してくれていたし、私は自身の世界に没頭していたから、誰も跡継ぎの強制はしなかったよ。収穫の時でさえ、ブドウを三房ほど摘んだ記憶しかないくらいだからね。けれど、22歳のときに、家族の問題と言う、選択の余地もない、仕方のない理由がきっかけで、ワイン造りの世界に入り込んだ。チャレンジと思ったその決断に、父も周りの人間も信頼して任せてくれたよ。私は完璧主義なところがあり、失敗が大嫌いなんだ。知識のない私が出来ることは、誰よりも働くことだったから、すごく、すごく仕事に従事したよ。すぐに楽しさを見つけて、自分の新たな世界に没頭した。畑仕事も醸造も、創造を掻き立てられた。そして、いつしか最高のワインを造りたくなっていたんだ。不思議なことに、医者の道を閉ざした後悔なんて微塵も感じなかったよ。やはりワイン造りが好きで、性に合っていたのだろう。



完璧主義だけど、完成ではない。


ワイン造りを30年以上続けてきたけれど、一度たりとも同じことやルーティンワークはなかった。当たり前だけど、自然は毎年違う。毎年、繰り返し、私達生産者はドキドキする。なんの保証もなく、毎年ゼロからのスタートである。常に努力をし、研鑽するが、決して完成することはない。どうすれば良いのかはわかっているけれど、どうなるかはわからない。ただ、その完璧主義を自然に行えることを、常日頃心掛けているよ。



ダンディズム。



イギリスでは「完璧に近いジェントルマンを自然に行うこと」をダンディズムと呼ぶのかもしれないが、フランス、特に私は、エレガントで美しいものを好む要素を更に追加する。私は、美しいイメージがとても好きで、このカーブも見事な作りだろう?ワインも同様に、エレガントでデリケートなものが好きだ。かくかくし、とげとげしたワインは私には耐えられない。ワインは造り出すものゆえ、造り手の影響は非常に大きいんだ。魅力的で女性にモテる生産者のワインは、とても美味しいよ。それは間違いない。女性への興味と、ワインへの興味は通じるものがあると思う。ワインの作り手は魅惑的でもあるんだ。女性を喜ばせ、魅了するものを造っているんだからね。そして更に、犬を飼っている生産者も美味しいものを造るね。僕も飼っているからね(笑)



味わいはテロワールが作り出す。



注意して欲しいことがあるが、生産者がエレガントや繊細さを追求し、かつ魅力的であったとしても、ワインの味わいはテロワールが作り出すということ。例えば、ポマールのワインはエレガントではあるが、もの凄い繊細さを出すことはできない。そういう意味で、男性的なニュアンスを感じると思う。逆に、ヴォルネイは、デリケートな要素を表現しやすい。シャンボール・ミュジニーも同様だね。ジュブレイ・シャンベルタンは少々難しい。私は、ピュリニー・モンラッシェ(白)やヴォルネイのような、エレガントなワインを作り出せる土地を持っている。作り手の人間性や、魅力、目指す味わいに、同調できる土地を有することは、非常に幸運な事なんだよ。




ワイン造り。



ワイン造りは子育てに似ているね。厳しくしても駄目、自分の理想を押し付けても駄目、時間を掛けゆっくりと、個性を開花させてゆく事。ストイック過ぎず、暴力的ではなくね。成長や熟成も、静かに優しく待つ。あくまで理想論だよ。息子にはもう少し厳しくても良かったかなって思うこともあるからね(笑)人もワインも、生まれた環境、育ちに違いがある。しかし、どんなに出が良く、育ちが良くても、病気には注意しないとね。



こだわり。



私は旅行が好きで、世界各国でいろいろなワインを飲む。ブドウ以外で作ったお酒は飲まないようにしている。面白いことに、ワインを飲むと、その生産者の人柄がよくわかるんだ。私はワインを通して、世界中の生産者に会っているようなものだよ。



幸せになれる魔法。



私達生産者は、人を喜ばせたい、幸せにしたいと思ってワイン造りに挑んでいる。ワインは幸福のメッセージなんだよ。だからこそ、ジャーナリストから良いコメントを頂いたり、批評家から高得点を頂いても、それらはたいしたことに思えないんだ。自分のワインを飲んで、人が笑顔になってくれる瞬間を垣間見たり、良い時間を過ごせたと思って貰う事のほうが嬉しいんだ。それこそが、僕ら作り手の幸せだね。

ワイン、それは、世界中の人々を幸せにできる飲み物だよ。

そして、私のワインは人を幸せにする魔法を掛けてあるんだ。試してごらん。



  • Henri Boillot アンリ・ボワイヨ

  • 1630年代から続くヴォルネイの名家であるボワイヨ家。現在の当主アンリはドメーヌの5代目。ヴォルネイを中心にピュリニー・モンラッシェ、ムルソーなどに畑を持ち、彼の作り出すワインは世界中で高評価を得ている。

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